矯正治療により神経が死んだと思われる前歯の治療

矯正治療による歯根吸収 上あごの前歯

矯正治療で歯の神経が死んでしまう事は稀に有る

矯正治療で歯の神経が死んでしまう事は極稀に有る様です。その場合、歯の色の変化で気付かれる場合が多いです。この患者さんは14歳。マウスピース矯正により矯正治療を東京の施設で受けておられました。気付かれたのは歯茎から膿が出てきたからです。そして、居住地の傍で根管治療を始めたもののあまり、上手う行かないために、ネットを見て小机歯科に来院されました。

矯正治療による歯根吸収

問題は、ただ、神経が死んでいる歯では無い事です。矯正治療に伴う歯根吸収を起こしている事です。歯根吸収を起こすと、根の先に有る根尖孔が結果的に広がってしまうのです。

どうしてかと言うと、この様な前歯の場合、歯の神経があった所である歯髄は根の先を頂点として円錐状なのです。通常の健康な前歯は、年齢にもよりますが0.2~0.4ミリ程度の孔が円錐の先に孔が開いている形です。これが根尖孔の直径です。しかし、矯正治療で揺さぶる力が働くと、硬い歯の根の先が自然に吸収してしまうのです。

その根尖孔の直径はこの場合約、1ミリを超えていました。こうなりますと、根の先にしっかりと蓋をする事が通常、日本で行われている側方加圧根充法ではほぼ無理になります。と言うより、根管充填材が根の先からすっぽ抜けて、慢性疼痛の原因となります。

ケースルクト法ならではの根管充填

ケースルクト法は、4ミリ程度の長さの短い充填材を軟化させて根管の中に入れて、プラガーと言う器具で充填材を押して根尖孔を塞ぎます。この時に優れているのは、押す力を加減できる事です。根尖孔が開いている場合は、根尖孔から充填材がすっぽ抜けない様な力を自分の手の圧力でコントロールして充填する事が出来るのです。

意外とこの圧力のコントロールが他の方法では出来ないのです。それは根充材であるガッタパーチャと言う天然ゴムの一種を充填するのですが、このガッタパーチャを予め柔らかくして、ピストル状のノズル先から根管の中まで出る装置が有ります。これも根尖孔が開いていなければとても有用なのですが、この様な根尖孔が広がっているケースですと、必要以上の量を根管内にいれてしまいます。それを機械の決まった圧力で根尖孔方向に押しますので、場合によっては根尖孔からかなり、すっぽ抜けてしまう場合も有るのです。

米国で行われているCWCT法でもほぼ無理です。なぜならば、固形の太いガッタパーチャを根管内に入れてから、根管内に瞬間的に200度程度になるヒートプラガーと言う物を入れますが、やはりすっぽ抜けが起こると思われ根尖孔の閉鎖は上手く行かないでしょう。

よって根尖孔が開いた症例は、ケースルクト法が最も威力を発揮します。

この症例も力をコントロールして根尖孔を閉鎖する事に成功しました。その結果1年2か月後には、根の先の骨が再生してまいりました。

根尖孔は、歯科医師が治療を行う際に広げ過ぎてしまう場合も有ります。それは根尖孔付近まで、ファイルと言う器具を無理やり押し込んでしまうからです。この場合でもケースルクト法を使えばかなり治ります。

尚、現在ならこのケースは歯髄再生に最も適したケースだと思われます。

 

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